2011年9月8日木曜日

ADcafe.311 vol.02 レビュー

08.27に行われたADcafe.311 vol.02のレビューを掲載します。
今回のレビューは、当日「a book for our future」のプレゼンをしていただいた8to8officeの中木亨さんに書いていただきました。また、「a book for our future」については、谷口景一朗がレビューを記載しております。

是非、ご一読下さい。

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 ADcafe.311 vol.02に呼んでいただきありがとうございました。手短ながら私の主観と推測に基づき、時間内にお聞きできなかった内容など含め簡単にレビューを書かせていただきます。間違っている点などがあったらご指摘いただけるとありがたいです。

 まず、震災復興に参画しているデザインチームは、これまで基本的に他の地域で行われていることを参照する機会に乏しいように思います。アーキエイドが現在調整中であり、時期に網羅的に発表されることもあると思いますが、公の場で他地域や、他チームの進捗を確認するのは私にとって初めてのことでした。
 震災がらみのプロジェクトについて、私の観測範囲で分類分けすると大きくは以下のようなものに分けられると考えています。

1)避難所の居住性に関すること。(避難所は既に閉鎖されている箇所も出始めているため、このフェーズは既に終わりつつあります)
2)仮設に関すること(住宅の場合もあれば、公共性を持った母屋の場合もあります)
3)リサーチ(建築・都市計画・ラ系で観測する視点に差異があり、土地のリソースをどう読むか多角的に考えるきっかけになります)
4)本設の復興計画(都市部のものと、小規模のものとでスキームに差異があります)
5)その他のボランティア活動(建築分野以外の内容があります。デザインの分野は大きなプロジェクトのほんの一部ですが、今回はその他ということでまとめます)

 気仙沼復興支援プロジェクトや、我々「a book~」のプロジェクトについては4)にカテゴライズされますし、mova projectや、どんぐりハウスといったプロジェクトは1)2)にカテゴライズされます。とりわけ仮設に関する内容は個人的にはタッチしていなかったこともあり、非常に気になっていました。仮設住宅は法律では2年で取り壊さなければいけないとされていますが、過去事例や現状の見通しを考えると実質それ以上の期間を過ごすことになる可能性が非常に高いことを恥ずかしながら最近知りました。その期間の長さを考えると仮設における環境はやはり軽視できないものです。

■工学院大学学生有志によるmova project
 合板を用いた移動式家具の設計でした。スタディの段階での「とある苦悩」や、予算取りの大変さ、プレゼンでは言及していませんでしたがおそらく現地でのマッチングにも苦労したのではないかと推測します。スピーディに実現までかこつけたプロジェクトです。
 ちなみに仮設住宅の環境という点では、現在では内部空間以外に外部空間の居住性による影響、すなわち仮設住宅同士の情報流通という課題が浮かび上がっています。というのは、公のサービスでは手の行き届かない高齢者や小さい子供を住民全体でカバーするようなことや、口コミで意地される情報インフラのようなものが仮設住宅での生活を健全なものとして維持するために軽視できないものであると認知され始めたからです。ベンチひとつで起こる情報流通などさえ重要視される現状があります。
 その中で、ハードウェアコミュニケーションという視点で考えた場合、実装後の使用のされ方についてのフィードバックは後の同様のプロジェクトにおいても非常に参照すべき内容になるのではないでしょうか。個人的には非常に分析したいと考えている事項でした。

■東海大学チームのどんぐりハウス

 ロハスデザイン2011大賞を受賞した仮設の小屋の設計についてでした。ウッドブロック構方を独自にスタディし、断熱方式やソーラーパネルとバッテリによる自家発電方式、バイオ分解式トイレ等、新潟中越地震の際に蓄積したノウハウを生かしていることがよくわかる内容であり応急仮設のクオリティとして非常に高いものであると思います。
 仮設に関しては、上記の理由から居住性が求められることは必須ですが、それに比してスピーディーな建設が求められます。試験的なものであっても新技術を導入するためには労力を要するように思います。中越地震のノウハウをしかと受け継ぐことで実現を早めたのだと思いますが、先の事例をしっかりと継承できていることは多いに評価べき事ではないでしょうか。
 
■SFCによる気仙沼復興プロジェクト

 現地生まれの学生を核に、リサーチ・情報流通・コミュニティ形成・地区計画提案とマルチプルにまちづくりの提案を行っているチームでした。多方面の課題をカバーするためにあらゆる手段を導入しているのが、スマートに計画されています。まちづくりの本筋の計画を提案していく場合、個人的には地域住民との関係、行政とのかかわり方についてどうしても着目してしまうのですが、その点に関してはセカンドオピニオンとしてのスタンスを表明しているのだと私は認識しています。特に、気仙沼は市街地であるため、どのような課題があるのか私にも予測がつきませんが、常に変わっていく情勢の中で、今後もどのように臨機応変に対応していくのか気になります。今後時間がたったときに、また意見をお聞きしたいプロジェクトです。
 
■東北カフェ

 前4者とはまったく違った意図を持った企画であるように思います。東北の名産品を学園祭で売るという企画。当方、福島出身でありまさかADcafeでゆべしを見るとは思わなかった・・・・私自身の主観としては、この企画自体おそらく震災にかかわらず日本全国のローカル食品にスポットを当てることが出来る企画なのではないだろうか?と考えています。わきあいあいとした空気が印象的であり、非常に和ませていただきました。

 我々も含めて、プレゼンター5者は大学がかかわっているという共通点により今回選抜されました。その中でも今回は関東の大学が多くあったように思います。現地との往復でさえ非常に労力を伴う中、現地でFIXする作業は非常に大変だったと思います。こういったプロジェクトはすんなりと実現できるものもあれば、現地ニーズとマッチングしない場合も多くあるでしょうし、場合によっては潔く諦めることもまた英断であることもあります。その中で継続的に活動を行っているチームであるため、これまで非常に柔軟な働きをすることが求められたのではないでしょうか。
 
 また、どのプロジェクトも、非常に疾走感のある内容であったように思います。それは学生ゆえのフットワークであったり、災害対策ゆえのスピードであったりということだと思います。しかし、最後に質問した「モチベーションの変化」ということにもつながるのですが、ノウハウの蓄積、事例のストック・共有、そしてそれを放出すべきフェーズが今後必要なのではないかと私は考えています。一度しっかりと分析することで得るフィードバックというのは次のステップ進んでいく際に非常にウェイトのある作業なのではないでしょうか。同様の案件に遭遇するということもあるでしょうし、そこで得たノウハウから平常の業務へ還元されることも多くあると思います。それはアカデミックだからこそ可能であるステップではないでしょうか。
 
 その一歩目としても、今回のADcafeは我々デザインにかかわる人間にとって良い機会であったと思っています。ありがとうございました。

8to8office/中木亨(@irumatsu

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 8to8officeの中木亨さんに、宮城大学中田千彦研究室が関わっている南三陸町戸倉地区長清水集落における復興プロジェクト「a book for our future」について紹介していただいた。

 このプロジェクトの興味深い点は、断片的な複数のアイディアを発端に集落の人たちとの対話を重ねることで、一歩ずつ階段を上るかのように集落全体を束ねる1つの案へと集約していく、そのプロセスにある。まず、彼らは6月に長清水集落で第1回WSを開催した。そこでは、学生達が思い思いに集落の未来についてのスケッチを描き、そのスケッチをネタに集落の方たちとの交流を図ったという。道の駅や集会所の提案から、集落を流れる小川にかける橋や集落の風景からインスピレーションを受けた手ぬぐいのデザインに至るまで、様々な種類のスケッチが並び、それについて集落の方たちからコメントをいただくことで、人々の記憶や集落への想いといったものを顕在化させていくこの手法は、各地で行われているWSに
共通する重要な手法である。

 このWSで集落の方から聞かれた「住まいへの提案が欲しい」という言葉から、彼らの活動は次のフェーズへの進むことになる。三陸地方特有の海に迫る山地。その地形を生かした集落のつくり方について、WSのときと同様、断片的なスケッチや事例を集めては住民の方と対話をし、少しずつ長清水集落の地形に案を落とし込んでいく作業をしている。このプロセスの中でおもしろいのは、集められたスケッチや事例は全てWEB上で公開されており(http://1000lab.tumblr.com/)、集落の方はもちろんのこと、私達も自由にアクセスして案の変遷をたどることが出来ることである。通常、復興に向けての提案をする、となると何度も現地を訪れて対話を重ね何ヶ月にもわたって検討を重ねた案を満を持して提案しなければならない、と構えてしまいがちでなかなか多くの人が気軽にアイディアを持ち寄ることは難しい。しかし「a book for our future」の手法では、彼らのプロセスの変遷を理解した中で「ちょっとスケッチを描いてみた」とか「こんな事例知ってるよ」などといった気楽な提案を誰でもすることが可能になる。そうして集められた数々の案は、彼らが集落の方と対話を重ねる中で淘汰され、重要なエッセンスは未来の長清水集落のデザインの中に息づくことになる。クラウドデザインとも呼ぶべきこの手法は「a book for our future」を始めるにあたり、最初に集落の方から言われたという「集落を考える仲間を集めて欲しい」という期待にも応え得る手法であり、今回の震災復興のみならず、これからの21世紀型のまちづくりを進めていく中で、非常に有効な手法であると言えるのはないだろうか。

 このように非常に可能性を秘めている「a book for our future」だが、今後課題となるのは行政との関わり方であろう。同じ南三陸町内の旧歌津町伊里前地区では「伊里前契約会」というローカルコミュニティを中心として、震災後早い段階から高台移転に関する集落独自の案をまとめていた。移転先の土地地権者や住民の了解も取れていた。しかしこの計画は、「規模が大きく国直轄のプロジェクトとする」という理由から、現在は南三陸町より待ったがかかった状態になっているという。しかし、国直轄のプロジェクトとなっては、予算がつくのは早くても来年度である。地元住民から起こったせっかくの復興への息吹が、行政の紋切り型な対応によって萎んでしまうのはなんとも口惜しい。長清水集落におけるこのプロジェクトが地元行政の体制にも風穴をあけ、被災地全体の希望の灯となることを願ってやまない。

ADcafe.311 staff/谷口景一朗(@keiichirot

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