2011年12月13日火曜日

ADcafe.311 vol.04 レビュー

12.03に行われたADcafe.311 vol.04のレビューを掲載します。
今回のレビューは、渡辺明設計事務所の小池宏明さんに書いていただきました。

発表していただいた各プロジェクトを体系的に分類した上で、それぞれのプロジェクトについて詳細な感想を寄せていただいていますので、是非ご一読下さい。

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□はじめに

はじめまして。
AD cafe vol.02から参加させていただいている小池と申します。
この度スタッフの谷口さんのご厚意でAD cafe vol.04 についてのレビューを書かせていただくことになりました。拙文にて失礼いたしますが、至らぬところ等、御指導賜われれば幸いです。

□ AD cafeについて

2011.3.11の震災から約9ヶ月の月日が経ち、被災地の周辺には復興という言葉が目立ち始めています。この言葉はその前向きな力強さゆえ「いまそこにある現実」を覆い隠すきらいもあり、現実と現在の接点が本当に同じところにあるのかどうかを見極める必要があると言えます。そうした中で、今回で4回目となるAD caféはこれまで学生や若手社会人を中心に震災に関わる様々な意欲的な取組みを紹介し、現地に目を向けその課題と成果を一同にすることで、小規模ながらも情報共有の役割を果たしてきていると言えます。

□ 発表者の方々

今回は過去に発表していただいた4組の方々、私共よりも少し上の世代の菅原大輔さんにお越しいただきお話を伺いました。
vol.02のレビューにおける中木さんの分類をもとに、整理させていただきまして、次章でそれぞれの発表報告をさせていただきます。

◇震災関係プロジェクトの分類(参考:2011.9.8 中木さん)
1) 避難所の居住性/仮設に関すること
  *陸前高田の木造応急仮設住宅: 建築家・菅原大輔さん
*女川町仮設住宅:チームVANさん
2) 本設の復興計画
*a book for our future,311:中木亨(8to8office)さん
3)創作やアートによる活動
  *Creative for Humanity とプロジェクトFUKUSHIMA! :アサノコウタさん
* tana*project:もりひろこさん

□発表について

1) 避難所の居住性/仮設に関すること
国土交通省の発表では12月5日現在、被災地を始め各地に52,120戸の応急仮設住宅が建設されました。供与期間が原則2年、その後の常設転用は不可とされる仮設住宅は通常各都道府県が協定を結ぶプレハブ建築協会からの供給を受け建設が行われますが、今回は地元企業への発注が可能になり、協会の標準仕様をもとに木造等の仮設住宅等が建設されることになりました。

*陸前高田の木造応急仮設住宅: 建築家・菅原大輔さん
岩手県陸前高田市住田町での60棟の木造応急仮設住宅です。住田町の住田住宅産業は震災前から「非常事態建設」を念頭に応急仮設住宅の開発をはじめ、今回もその経緯を踏まえ100Vの自家発電での施工、木材のパネル化による簡易組立等の規格化をもとに木造仮設住宅を建設しています。地場産業としての林業に町と企業が一体となって取り組んでいることもあり、町が仮設住宅の費用を負担し、事後に県が仮設住宅として認めているのも大きな特徴と言えます。そうした中で菅原さんは住田住宅産業と原田勝之氏とともに現地にてインフラ整備と配置計画を担当。最短距離で建物に給排水管を接続すること、既存樹木やプライバシーを考慮して建物の角度を振って配置すること等の操作で、外部空間に住民交流の場を設け、全体として集落のような仮設住宅群を構成しています。表面的な仕上げや構法に集中しがちな仮設住宅においてインフラ整備の重要性を明らかにし、配置計画で仮設住宅のあり方を変えることができることを示している例ともいえます。ここでは他に社団法人more Treesをはじめ多くの支援団体からペレットストーブやLEDなどの支援を受けており、菅原さんがハードを使うことでひと・こと・ものなどのソフトをどうつなげていき、どうすればそれらを最大限活かせるかを想像するのが建築家の職能なのではないかという話が印象的でした。

*女川町仮設住宅:チームVANさん
震災直後の体育館などの避難所で活用された紙管とカーテンの簡易間仕切りの提案と実施(vol.01)、女川町でのコンテナ積層型仮設住宅の竣工(vol.04)、現在進行中の集会所と震災から現在にいたるまで状況と共に必要とされる施設を継続的に建て続ける坂茂さん率いるチームです。
今回の発表ではISO規格のコンテナに窓を設けた居室(6坪タイプ)と、フレームのみのコンテナを組み合わせることで、耐震性を考慮しながらも開放的なリビングダイニングをもつ居室(12坪タイプ)を平面的に構成することや、3層に積層し、フットプリントを小さくすることで、外部に広いコミュニティースペースを設けること等の提案を紹介していただきました。住戸内部にはつくり付け棚を設置し、生活用品の収納スペースを確保しています。これらの棚はVANに寄せられた義援金をもとに現地で学生をはじめとするボランティアの方々により制作され、その数は1,800個にも上るとのことです。内部にはルイ・ヴィトン社、社団法人more Treesからの協力による間伐材の家具、良品計画からのカーテン等が設置されています。構法から内装、家具にいたるまで女川町をはじめ多くの支援が結実している仮設住宅でもあり、その支援規模の大きさは圧倒的で、先述の「ハードを使うことでひと・こと・ものなどのソフトをどうつなげていくか」に対するひとつの回答ともいえます。

2) 本設の復興計画

*a book for our future,311:中木亨(8to8office)さん
中木さんの活動については谷口さんによるvol.02のレビューが詳しいため詳細についてはそちらをお読み頂ければ思います。今回は特定のプロジェクトではなく、時系列の中で同時に平行して様々な動きや活動があったことを御紹介いただきました。青木淳建築計画所と共に協同提案する高台プロジェクト、中田研究室の学生発案の「なかしずてぬぐい」、UIA東京大会でのブース展示、そして現在進行中の木造建築物等、多くの人や企業が少しずつ関わり協同する小さな支援の集合が、ウェブ上の各種サービスを活用しながら行われているのが印象的でした。地元住民と遠隔地の方々との交信のみならず、データベースのクラウド化による情報共有など、汎用性のあるプロジェクトの進行形態も特徴で、本設の復興計画という大規模ゆえ、どうしても先行きが不透明な状況に陥る現状に対し、一つの小さな地区発のいわゆるボトムアップ型の復興計画の例とも言えるのではないでしょうか。復興計画の旗印のもとのひと・もの・ことのつながりをどう支援としてマネジメントするかが現地では非常に重要であるかを示唆しているように思います。

3)創作やアートによる活動

今回の震災には地震や津波に加え、福島での原子力発電所の被災による放射能汚染による被害があります。広範囲に及ぶ被災地で今も生活する方々と共にあるプロジェクトの紹介です。

*Creative for Humanity とプロジェクトFUKUSHIMA! :アサノコウタさん

Creative for Humanityでの活動と音楽家・大友良英氏方のプロジェクトFUKUSHIMA!における「大風呂敷」を御紹介していただきました。震災前からの「こどものえがくまち」「こどものいえ」をはじめとして現地のこども達と共に福島の可能性を模索してきたアサノさん。今回は避難所で段ボールを用いた「こどもの隠れ家」ワークショップを手掛け、生活に疲弊した大人たちが子どもたちの元気な様子を見て元気になったという話をされ、震災後も変わらない態度で継続的に福島のために活動していく様子は明るい可能性が提示されていたように思えました。後者の「大風呂敷」は実際に8月15日に行われたフェスティバルFUKUSHIMAの舞台でもあります。放射線衛生学者の木村真三氏の助言と共に放射線による表面被爆を防ぐため芝生に大風呂敷を広げ、そこで音楽と詩の屋外フェスティバルを行うという非常にメッセージ性の強いイベントでもありましたが、緑の大地に広がる大きな布地は本当に色鮮やかで美しく、そこで過ごす人々の楽しげな姿からその大風呂敷のおおらかさが際立っていたのがとても印象的でした。全国各地からの大・中・小に分けられた布地を市内の工房にて24時間態勢で縫い合わせ、多くの人々の手を伝い縫われた「大風呂敷」は広島の千羽鶴や戦中の千人針をどことなく想起させ、平和への願いが込められた巨大な布地ともいえます。大風呂敷は現在制作工房にて保管され、今後はアクリルケースに入れられて海外の美術館を巡回する話も出ているようです。
アサノさんは、自身が福島出身であることを拠り所に、「福島」と「FUKUSHIMA」をもって「フクシマ」に真っ向から立ち向かう稀有な存在ともいえます。現在は屋内に土や葉を敷き詰めたこどもの遊び場を二本松市に計画中とのことで、全国各地からの土や葉を集めているとのことです。

* tana*project:もりひろこさん

市井のボランティアとして避難所を訪れる中で、生活に関わるのものものを片付ける場所が足りないと感じ、段ボールで簡易収納「tana」制作するワークショップをはじめたもりさん。今回はVol.01では企画段階だったtana*projectがその後、段ボールやマスキングテープのメーカーをはじめNPO団体等の協力とともにこれまでに現地で何度かのワークショップを開催している様子を紹介していただきました。子どもや大人が「tana」に自由に絵を描く様子や創作に励む様子の写真はどれも楽しげで微笑ましい様子が印象的でした。10月には有限責任事業組合化を行い、今後の活動の継続のために、もりさん自身の立ち位置も変化しています。誰かと一緒につくるワークショップでは、参加者と運営者間のコミュニケーションはもとより絵の具や紙テープ、マジック等の工夫でひとつひとつの「tana」が豊かな表情に変化していき、参加者が充実した表情をしていたのがとても魅力的でした。現在は181個を制作し109人の方が参加されたとのことです。
「身の回りで使うものを自分でつくれるようになることがいい」というもりさんのことばからも児童福祉や高齢者福祉、こどもの教育活動などへの広がりがあるように思えました。最初は小さな思い付きであっても実現へむけて行動することで多くの人の手により発展していく可能性があることを示唆するプロジェクトでもあります。

□まとめ

今回は魅力的な仮設住宅を御紹介いただきましたが、総数52,120戸の仮設住宅において、雑誌等に掲載されているものを含めてもその数は微々たるものにすぎません。
仮設住宅と一言でいえども、自治体や関係団体の体力や温度差が住環境格差をもって顕在化している様は残酷ともいえます。この一見どうしようもない状況に対してvol.04では資金を伴う個人の行動力の可能性(VANさん)、インフラや配置という建物周辺を考える事での展開可能性(菅原さん)、地域発情報ネットワーク経由の復興計画(中木さん)、現状を受け入れた上で目の前の人のために行動すること(アサノさん、もりさん)と非常に示唆に富む発表が行われていたように思います。

□今後の課題

*仮設/本設住宅における「土地」の問題
後半のディスカッションでも話題に上がりましたが、仮設住宅には建設地の問題があります。「土地を買い、建物を建てる」従来の手順に対し、緊急的に広い土地を必要とする仮設住宅は国有地のみならず民有地を利用することもあり、土地の名義や税制の点からも微妙なところに位置しています。そうした中で国の補助金で建てられる仮設建物には事業体が入ったとしても「土地=床」に発生する家賃収入は見込めず運営資金の確保にも関わります。今後の本設においても「土地」や「道路」のような前提条件の理解と把握に基づく整備は重要な課題であるといえます。
*支援活動の持続性について
持続的な活動には当然ながら資金が必要です。これは全てのプロジェクト共通の課題になっています。一方で被災地域ではそこに生活する人々の失業など雇用問題が顕在化しており、第三者が内部に入り活動すること事体の是非を問う声も聞こえはじめました。今回発表された、チームVANさんのように寄付金を募り活動を行う例は実際にあり、寄付金による運営は世界的な医療活動組織でもある国境なき医師団も同様です。どう組織が社会と接続して活動するかは今後の被災地での活動や、別の地域が被災した場合を考えると重要で、特定の個人の行動力に頼るだけではなく組織だった仕組みを整え、備えることの必要性を感じます。

□おわりに
多くの方々がこれまで言われているように、震災での地震や津波による直接被害と地方都市における潜在的な問題の表面化による被害が何重にも重なっているのが現状です。被災地域を考えることで他の高齢過疎化地域、国の経済状況への関心を広げ、現状に接し対することで将来のリスクの軽減を思考することが求められている状況下ではこのような意見交換の場はその役割をもつものだと思います。

今回発表された方々は現在も継続して被災地での活動を行っています。
関係者の方々の今後の活動と健康を、被災地域で過ごす人々に少しでも多くの平穏が訪れることを願っております。
長々とした乱文の御静読にお付き合いいただきどうもありがとうございました。


小池宏明/渡辺明設計事務所

□参考文献

・「新建築 12月号」(新建築社)
・「新建築 住宅特集12月号」(新建築社)
・「建築雑誌10月、11月、12月号 特集 東日本大震災」(日本建築学会)
・「応急仮設住宅の着工・完成状況等」国土交通省12月5日現在

2011年12月4日日曜日

◇無事終了しました◇ADcafe.311 vol.04 2011.12.03◇

◆【ADcafe.311 vol.04 2011.12.03】が無事終了しました。◆

今回も、3331 Arts Chiyodaの102号室、わわプロジェクトさんの場所をおかりして開催しました。

今回は、1、2回目でプレゼンしてもらった人たちにその後の経過を報告してもらったのに加え、ゲストとして菅原大輔さんに来ていただき、これまでとは少し違う世代の方のお話も聞けて、とても勉強になったと思います。
またその後のディスカッションでも、会場にいらしたArchiAidを中心になって運営されている堀井義博さんから鋭い質問が次々と飛び出し、これまでの経過や今後の展望について白熱した議論が交されました。
詳しいレポートはまた後日こちらでアップいたしますのでしばらくお待ちください。
発表者のみなさん、お忙しい中どうもおつかれさまでした!
また、おこしいただいたみなさんも、どうもありがとうございました。

さて、今年のADcafeはこれで終わりです。
次回は来年1月末に開催予定です。
また日程など詳細が決まりましたらこちらで告知します。
来年もどうぞよろしくお願いします!

<staff一同>



2011年11月9日水曜日

*【詳細決定しました!】ADcafe.311 vol.04 【2011.12.03(土)】*

◆ADcafe.311 vol.04を開催します◆

9月のvol.03から少し間が空きましたが、vol.04の開催が決定しました!
今後ADcafeは2-3ヶ月に1回のペースで開催し、建築とそのまわりの分野の支援の情報共有の場として継続していく予定です。

今回も、前回同様3331 Arts Chiyodaにて、場所をお借りします。

vol.04は、陸前高田の木造応急仮設住宅、住田町+住田住宅産業開発の「木造仮設住宅ユニット」のインフラと配置を計画されました建築家・菅原大輔さんにお越しいただき、お話いただけることになりました!

また、2011年も最後の月、12月に開催ということで、レビューと忘年会を兼ねて、これまで発表してくださった方に、その後の活動についてご報告頂くことになりました。

7月に行われたvol.01で発表してくださった、
VAN間仕切りプロジェクト:土井亘・宮幸茂+チームVANさん
こどもの隠れ家プロジェクト:Creative for Humanity あさのこうたさん
8月に行われたvol.02で発表してくださった、
a book for our future,311について: 中木亨(8to8office)さん

の3組の方にもお話し頂きます。

今回からは、参加費は頂かず、どなたでもご参加頂けるようにします!

日にち:2011年12月03日(土)
時間:13:50開場 14:00開始 17:00終了予定
場所:3331 Arts Chiyoda
〒101-0021 東京都千代田区外神田6丁目11-14


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参加費:無料
参加方法:adcafe.mail@gmail.comまで参加の旨と名前・連絡先をご連絡ください。

【発表してくださるみなさん◆決定しました】

<program>
13:50 開場
14:00 スタート
14:10
 これまで発表してくださった方々のその後の活動について
 1.土井亘+チームVAN
  「女川町コンテナ仮設住宅とそれに関するボランティア活動について」
 2.アサノコウタ「Creative for Humanity」福島代表/プロジェクトFUKUSHIMA!「福島大風呂敷」
  「福島とFUKUSHIMAについて」
 3.中木亨(8to8office)+宮城大学中田研有志
  「a book for our future,311の経過について」
 4.もりひろこ/tanaproject
  「tanaWSの報告」
15:20 休憩
15:30 菅原大輔(SUGAWARADAISUKE)
   【地場産業×建築家】集落のような仮設住宅@陸前高田
16:10 フリートーキング
17:00 クローズ


出席希望のご連絡、質問等は上記アドレスまでご連絡ください。

ADcafe staff

2011年10月1日土曜日

ADcafe.311 vol.03 レビュー

09.23に行われたADcafe.311 vol.03のレビューを掲載します。
今回はADcafe.311を主催させていただいている中川が書かせていただきました。

ぜひご一読いただけたらと思います。

□はじめに

ADcafe vol.03で発表してくださった皆さん、ありがとうございました。稚拙な文章ながら、レビューを書かせていただきたいと思います。
今回は学生会議のメンバー4人の研究室や団体におけるプロジェクト、アトリエ事務所に勤務される方の個人のプロジェクトを発表していただきました。

□学生会議について

学生会議は日建設計特別オープンデスク生による第一回復興を考えるブレインストーミングの懇親会において立ち上げたグループです。内容は数ヶ月に1回仙台か東京で集まり、それぞれの近況報告をしあって話し合うというものです。
学生という立場は、まだ実務能力も足りず金銭面においても余裕がない一方で、学生だからこそのフットワークの軽さを持っていると思います。目に見える成果をすぐには出せないかもしれませんが、お互いの情報を共有しながら、自分たちにもできること、また自分たちだからこそできることを話し合うことは、有意義なことだと考えています。
 
●東北大学遠藤貴弘くんによるせんだいスクール オブ デザインでの活動

 災害にまつわる人数、金額、距離、重量、面積などの「量」に注目し、視覚化を試みた活動でした。具体的な内容としては以下になります。

・研究者たちがフォーカスする被災地の分布範囲を視覚化した「地図の地図」
・津波の高さを直感的に理解できるよう視覚化した「比較によって高さを体感する」
・津波が総体としてどのように押し寄せたかを視覚化した「海岸延長によって津波の総体を認識する」
・地震のすさまじい揺れを一目で見て取れるよう視覚化した「揺れるグリッド地図」
・救援物資の入りと出を視覚化した「支援のネットワーク」
・各避難所における震災直後からの物資の不足状況の時系列変化を視覚化した「避難所アセスメントの時空間マッピング」
・具体的な復興の度合いのイメージを視覚化した「50%の被災者復興過程」

災害において、情報の共有はすごく大事なことです。実験の結果も解析しなければあまり意味をなさないように、震災の状況もただ数字をあげるだけでなく、このようにわかりやすく視覚化することで、より迅速なトップダウン的な状況把握を促し、さまざまなことが改善されてくるのではないかと思いました。

□アーキエイドのサマーキャンプについて

石巻市東部の牡鹿半島にある30の浜でそれぞれ地元住民に方々にヒアリングを行い、復興計画案を提案する、7/20-24の5日間で行われたワークショップです。現地において、細かな住民の意見をくみ取りながら計画していく、ボトムアップ型の街づくりと言えます。
LINK:http://archiaid.org/projects/pj0015/

●東京工業大学袁碩くんによるアーキエイド・サマーキャンプの活動報告

 東京工業大学塚本由晴研究室が担当したのは鮫浦/大谷川浜/谷川浜/祝浜で、鮫浦湾を取り囲む、ホヤの養殖が盛んな場所でした。ここで住民の方へのヒアリングをもとに重要なキーワードとして挙げたのは、住民の浜との結びつき、浜ごとの自立性でした。このチームの特徴的な提案は、4集落の漁業機能の集約でした。

袁くんは、現地に行く際に外から人が入っていくことはどうなのかという戸惑いがあったと言っていました。しかし、住民の方が復興のイメージはそれぞれ持っていてとにかく話したいとは思っているが、それをうまく表現できないのが問題であることがわかり、そこで計画案をつくるサポートをしたいと考えたようです。住民の細かな意見を集めていく今回の取り組みは、学生という立場はプラスに働いていたのではないかと思いました。

サマーキャンプの後の漁協支所の協議によって、袁くんのチームの提案した4集落の漁港の集約案が進められることに決まりました。今後も関わらせていただくとのことで、どうなっていくのか注目したいと思います。

●東京理科大学荒井隆太郎くんによるアーキエイド・サマーキャンプの活動報告

東北工業大学福屋粧子研究室+東京理科大学water edge studioが担当した小渕浜は、トツ山を囲み、2つの港に面していることが特徴として挙げられました。特徴的な提案としては、トツ山を一周するお祭りを考慮に入れた道路計画、2つの港をつなぐみなと広場の創設でした。

荒井くんは、住民の方へのヒアリングがいかに難しいかということと、住民の方たちの方が斬新なアイデアをもっているということを話していました。ヒアリング会場において、前に座る人、後ろに座る人、座らず遠くから見ている人、そもそもその場に来ない人、様々な住民の方がいらっしゃる中で、自分たちで模型を後ろの席の方や外に持っていってお話を伺うと、全然違った意見が出たようです。「ヒアリングをする」というときに、どのような方からどのように意見を拾っていくのか、よく意識する必要があることを考えさせられるお話でした。

小渕浜は現在、小渕浜通信というHPを立ち上げ、活発な復興プロジェクトを記録しています。これがおそらくサマーキャンプの後からであったことから、サマーキャンプにおける取り組みが住民の方々をさらに勢いづけることに貢献できたのではないかと思います。

●東洋大学大山宗之くんによる研究室においての活動報告

・アーキエイド・サマーキャンプ
 
 東洋大学藤村龍至研究室が担当したのは小網倉浜/清水田浜で、カキやイワシの養殖が盛んな場所でした。大山くんのチームの提案で特徴的だったのは、高台移転で分散する住宅地を結ぶ散歩道、将来観光地にもしていく展望からの宿泊施設の新設でした。

大山くんチームの活動において特徴的だったのは、現地調査の際にまずお墓を見学したということです。これによってその土地において権力のある人がわかり、実際に訪ねてみるとその方が区長をやられている方だったとのことです。ヒアリングにおいては、はじめは「区長のおっしゃることが絶対である」という住民の方の共通認識があり、こちらのチームも細かく意見を拾っていくことには苦戦したようでした。また、住民の一人は仮設住宅を行政から支給されるのを待っていられないとご自身で購入された、という話もありました。

・国土計画リサーチから3.11を経て書籍になるまで

東洋大学藤村龍至研究室における研究活動について。時間の意識を持つ、インプットからアウトプットへという研究室の指針によって、リサーチから書籍に掲載するまでがかなりハイペースで驚きました。1年半で掲載されたものは以下です。

・『アーキテクチャとクラウド』『思想地図βvol.1』に掲載したCITY2.0リサーチ
・『JA82 -日本の都市空間2011-』に掲載された恵比須・大崎の都市空間リサーチ
・『思想地図βvol2』に掲載されたLITTLE FUKUSHIMA
・『住宅特集』2011年9月号に掲載されたTROPICAL CITY

サマーキャンプにおいても、これらのリサーチの蓄積は大いに生かすことができたのではないかと思います。最後に、「質問する」ことを常に心がけていると話してくれた大山くんは、ADcafeの場でもしっかり一番に質問してくれました。

●ナカジマシゲタカさんによる「オクリエ、アシタエ」の紹介

「オクリエ」は年内の取り壊しの決まった建物に送り化粧をするプロジェクトです。場所は福島県いわき市の小名浜です。ナカジマさんとたんのさんの2人を中心に進められ、住民の方を巻き込みながら行われていきました。壁一面に広がる松の木と、絡み合う光、また「小名浜カラ!」と大きく書かれた力強いメッセージからは、これから復興に向けて、何かが小名浜で動き出すことを予感させてくれるように思います。この「オクリエ」は本にもまとめられ、8月15日に所有者のご家族に送られました。これで「オクリエ」は終了し、これからは「アシタエ」というプロジェクトを行っていかれることです。

ナカジマさんは、「今日できること」をやりながら、「明日できること」をやっていくとおっしゃっていました。「今日できること」であった「オクリエ」のような変化が目に見えて感じられるものは、人の心をぱっと明るくし希望を感じさせてくれるような、すごく魅力的なプロジェクトだと感じました。これからさらに広い意味での復興を目指した、「明日できること」である「アシタエ」がどのような壮大なプロジェクトになっていくのか、すごく気になります。

□フリートーキング

 後半のフリートーキングでは、情報の共有や大学の役割について主に話し合われました。

 情報をネットで公開するなど「ただオープンにする」というよりは、「必要な場所にちゃんと届ける」ことが大事という意見や、情報発信のひと手間を行う第三者の組織が必要なのではないかという意見がありました。ネットで不特定多数に向けて発信するやり方からADcafeのように顔を直接見合わせて伝えるやり方まで、かなり幅広い「共有」の仕方があります。それを場合に応じてデザインすることが大事であることを考えさせられました。

 また、大学は理系文系問わず色々な学部が集まっているため、相互に情報を共有しやすい、あるときは行政や民間企業、建築家など他の組織と関わりやすい、といった利点が考えられます。しかし現状としては、建築学科で行われていることと社会・経済に溝があること、また、入れ替わり激しい中で研究内容をちゃんと継承するのが難しいのではないかということなど、様々な問題を指摘され、大学院生である私自身としてもすごく実感している問題でした。どうすれば研究がしっかり社会において役立つものになりうるのか、これは震災に関わらず常に立ちはだかる問題であるように思います。

□おわりに

今回は発表の内容のみならず参加者も色々な立場の方であったため、議論がすごく活発に行われたように思います。違った立場の方とは、このように顔を合わせて話すことが特に大事で、それによってさらに広い視野からいろいろなことを考えられるようになるのだと思いました。

長くなりましたが、発表してくださったみなさん、参加していただいたみなさん、本当にありがとうございました。


ADcafe.311 staff/中川あや

2011年9月26日月曜日

◇無事終了しました◇ADcafe.311 vol.03 2011.09.23◇

◆【ADcafe.311 vol.03 2011.09.23】が無事終了しました。◆

今回から、3331 Arts Chiyodaの102号室、わわプロジェクトさんの場所をおかりして開催しています。
震災支援のプロジェクトルームということもあり、展示も震災支援関連のものがあって、復興支援についての議論の場にふさわしい会場の雰囲気でした。

今回も、休憩中にはTohoku Cafeの方々にお菓子をお配りいただき、学生さんも多かったため、とてもにぎやかな雰囲気ですすみました。
すこしずつ顔なじみのメンバーもできてきて、今回は特に後半のディスカッションがとても意義あるものとなったと思います。
また、3331のHPでも告知していただいたため、建築系の方ではない方も参加いただくことができました。

今回は、学生の方を中心にArchiAidのサマーキャンプでの具体的な復興計画の内容を説明いただいたり、設計事務所に勤めながら個人として活動をしている方の発表と、とても幅広い内容となりました。
今後も当面は具体的な復興計画のディスカッションにちょっと変わり種のプロジェクトの報告をまぜ、議論の幅を広げていくといったプログラムにしていきたいと思います。
発表者のみなさん、お忙しい中どうもおつかれさまでした!
また、おこしいただいたみなさんも、どうもありがとうございました。

次回も月末に開催予定です。
また日程など詳細が決まりましたらこちらで告知します。
今後ともどうぞよろしくお願いします!

<staff一同>



2011年9月14日水曜日

*【決定】ADcafe.311 vol.03 【2011.09.23(金・祝)】*

【場所と時間決まりました!】
◆ADcafe.311 vol.03を開催します◆

今回から、3331 Arts Chiyodaにて、場所をお借りできることになりました!
次回以降も3331 Arts Chiyodaにて開催予定です。

☆参加費を500円とさせていただきます。
東大五月祭にて活動をされた、【TohokuCafe】にご協力いただき、
東北のお菓子とお茶をお出しします☆

日にち:2011年09月23日(金・祝)
時間:14:00開場 14:10開始 16:50終了予定
場所:3331 Arts Chiyoda
〒101-0021 東京都千代田区外神田6丁目11-14


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参加費:500円
参加方法:adcafe.mail@gmail.comまで参加の旨と名前・連絡先をご連絡ください。
※今回はお菓子の準備がありますので、事前登録をお願いします!

【発表してくださるみなさん◆最終決定しました】

<program>
14:00 開場
14:10 スタート
14:20
 1.遠藤貴弘+せんだいスクール オブ デザイン受講生+東北大学本江正茂研究室有志
  「災害のデータスケープ」
 2.袁碩(東京工業大学塚本由晴研究室)
  「アーキエイド・サマーキャンプ活動報告ー鮫浦/大谷川浜/谷川浜/祝浜編ー」
 3.荒井隆太郎+東北工業大学福屋粧子研究室+東京理科大学water edge studio
  「アーキエイド・サマーキャンプ活動報告ー小渕浜編ー」
 4.大山宗之+東洋大学藤村龍至研究室
  「アーキエイド・サマーキャンプ活動報告ー小網倉浜/清水田浜編ー」
  「国土計画リサーチから3.11を経て書籍になるまで」
15:20 ナカジマシゲタカ(伊東豊雄建築設計事務所、Butterfly Under Flaps.)
  「オクリエ、アシタエ」の紹介
15:30 休憩
15:40 お茶とお菓子×【Tohoku Cafe】の紹介
15:50 フリートーキング
16:50 クローズ

出席希望のご連絡、質問等は上記アドレスまでご連絡ください。

ADcafe staff

2011年9月8日木曜日

ADcafe.311 vol.02 レビュー

08.27に行われたADcafe.311 vol.02のレビューを掲載します。
今回のレビューは、当日「a book for our future」のプレゼンをしていただいた8to8officeの中木亨さんに書いていただきました。また、「a book for our future」については、谷口景一朗がレビューを記載しております。

是非、ご一読下さい。

********************

 ADcafe.311 vol.02に呼んでいただきありがとうございました。手短ながら私の主観と推測に基づき、時間内にお聞きできなかった内容など含め簡単にレビューを書かせていただきます。間違っている点などがあったらご指摘いただけるとありがたいです。

 まず、震災復興に参画しているデザインチームは、これまで基本的に他の地域で行われていることを参照する機会に乏しいように思います。アーキエイドが現在調整中であり、時期に網羅的に発表されることもあると思いますが、公の場で他地域や、他チームの進捗を確認するのは私にとって初めてのことでした。
 震災がらみのプロジェクトについて、私の観測範囲で分類分けすると大きくは以下のようなものに分けられると考えています。

1)避難所の居住性に関すること。(避難所は既に閉鎖されている箇所も出始めているため、このフェーズは既に終わりつつあります)
2)仮設に関すること(住宅の場合もあれば、公共性を持った母屋の場合もあります)
3)リサーチ(建築・都市計画・ラ系で観測する視点に差異があり、土地のリソースをどう読むか多角的に考えるきっかけになります)
4)本設の復興計画(都市部のものと、小規模のものとでスキームに差異があります)
5)その他のボランティア活動(建築分野以外の内容があります。デザインの分野は大きなプロジェクトのほんの一部ですが、今回はその他ということでまとめます)

 気仙沼復興支援プロジェクトや、我々「a book~」のプロジェクトについては4)にカテゴライズされますし、mova projectや、どんぐりハウスといったプロジェクトは1)2)にカテゴライズされます。とりわけ仮設に関する内容は個人的にはタッチしていなかったこともあり、非常に気になっていました。仮設住宅は法律では2年で取り壊さなければいけないとされていますが、過去事例や現状の見通しを考えると実質それ以上の期間を過ごすことになる可能性が非常に高いことを恥ずかしながら最近知りました。その期間の長さを考えると仮設における環境はやはり軽視できないものです。

■工学院大学学生有志によるmova project
 合板を用いた移動式家具の設計でした。スタディの段階での「とある苦悩」や、予算取りの大変さ、プレゼンでは言及していませんでしたがおそらく現地でのマッチングにも苦労したのではないかと推測します。スピーディに実現までかこつけたプロジェクトです。
 ちなみに仮設住宅の環境という点では、現在では内部空間以外に外部空間の居住性による影響、すなわち仮設住宅同士の情報流通という課題が浮かび上がっています。というのは、公のサービスでは手の行き届かない高齢者や小さい子供を住民全体でカバーするようなことや、口コミで意地される情報インフラのようなものが仮設住宅での生活を健全なものとして維持するために軽視できないものであると認知され始めたからです。ベンチひとつで起こる情報流通などさえ重要視される現状があります。
 その中で、ハードウェアコミュニケーションという視点で考えた場合、実装後の使用のされ方についてのフィードバックは後の同様のプロジェクトにおいても非常に参照すべき内容になるのではないでしょうか。個人的には非常に分析したいと考えている事項でした。

■東海大学チームのどんぐりハウス

 ロハスデザイン2011大賞を受賞した仮設の小屋の設計についてでした。ウッドブロック構方を独自にスタディし、断熱方式やソーラーパネルとバッテリによる自家発電方式、バイオ分解式トイレ等、新潟中越地震の際に蓄積したノウハウを生かしていることがよくわかる内容であり応急仮設のクオリティとして非常に高いものであると思います。
 仮設に関しては、上記の理由から居住性が求められることは必須ですが、それに比してスピーディーな建設が求められます。試験的なものであっても新技術を導入するためには労力を要するように思います。中越地震のノウハウをしかと受け継ぐことで実現を早めたのだと思いますが、先の事例をしっかりと継承できていることは多いに評価べき事ではないでしょうか。
 
■SFCによる気仙沼復興プロジェクト

 現地生まれの学生を核に、リサーチ・情報流通・コミュニティ形成・地区計画提案とマルチプルにまちづくりの提案を行っているチームでした。多方面の課題をカバーするためにあらゆる手段を導入しているのが、スマートに計画されています。まちづくりの本筋の計画を提案していく場合、個人的には地域住民との関係、行政とのかかわり方についてどうしても着目してしまうのですが、その点に関してはセカンドオピニオンとしてのスタンスを表明しているのだと私は認識しています。特に、気仙沼は市街地であるため、どのような課題があるのか私にも予測がつきませんが、常に変わっていく情勢の中で、今後もどのように臨機応変に対応していくのか気になります。今後時間がたったときに、また意見をお聞きしたいプロジェクトです。
 
■東北カフェ

 前4者とはまったく違った意図を持った企画であるように思います。東北の名産品を学園祭で売るという企画。当方、福島出身でありまさかADcafeでゆべしを見るとは思わなかった・・・・私自身の主観としては、この企画自体おそらく震災にかかわらず日本全国のローカル食品にスポットを当てることが出来る企画なのではないだろうか?と考えています。わきあいあいとした空気が印象的であり、非常に和ませていただきました。

 我々も含めて、プレゼンター5者は大学がかかわっているという共通点により今回選抜されました。その中でも今回は関東の大学が多くあったように思います。現地との往復でさえ非常に労力を伴う中、現地でFIXする作業は非常に大変だったと思います。こういったプロジェクトはすんなりと実現できるものもあれば、現地ニーズとマッチングしない場合も多くあるでしょうし、場合によっては潔く諦めることもまた英断であることもあります。その中で継続的に活動を行っているチームであるため、これまで非常に柔軟な働きをすることが求められたのではないでしょうか。
 
 また、どのプロジェクトも、非常に疾走感のある内容であったように思います。それは学生ゆえのフットワークであったり、災害対策ゆえのスピードであったりということだと思います。しかし、最後に質問した「モチベーションの変化」ということにもつながるのですが、ノウハウの蓄積、事例のストック・共有、そしてそれを放出すべきフェーズが今後必要なのではないかと私は考えています。一度しっかりと分析することで得るフィードバックというのは次のステップ進んでいく際に非常にウェイトのある作業なのではないでしょうか。同様の案件に遭遇するということもあるでしょうし、そこで得たノウハウから平常の業務へ還元されることも多くあると思います。それはアカデミックだからこそ可能であるステップではないでしょうか。
 
 その一歩目としても、今回のADcafeは我々デザインにかかわる人間にとって良い機会であったと思っています。ありがとうございました。

8to8office/中木亨(@irumatsu

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 8to8officeの中木亨さんに、宮城大学中田千彦研究室が関わっている南三陸町戸倉地区長清水集落における復興プロジェクト「a book for our future」について紹介していただいた。

 このプロジェクトの興味深い点は、断片的な複数のアイディアを発端に集落の人たちとの対話を重ねることで、一歩ずつ階段を上るかのように集落全体を束ねる1つの案へと集約していく、そのプロセスにある。まず、彼らは6月に長清水集落で第1回WSを開催した。そこでは、学生達が思い思いに集落の未来についてのスケッチを描き、そのスケッチをネタに集落の方たちとの交流を図ったという。道の駅や集会所の提案から、集落を流れる小川にかける橋や集落の風景からインスピレーションを受けた手ぬぐいのデザインに至るまで、様々な種類のスケッチが並び、それについて集落の方たちからコメントをいただくことで、人々の記憶や集落への想いといったものを顕在化させていくこの手法は、各地で行われているWSに
共通する重要な手法である。

 このWSで集落の方から聞かれた「住まいへの提案が欲しい」という言葉から、彼らの活動は次のフェーズへの進むことになる。三陸地方特有の海に迫る山地。その地形を生かした集落のつくり方について、WSのときと同様、断片的なスケッチや事例を集めては住民の方と対話をし、少しずつ長清水集落の地形に案を落とし込んでいく作業をしている。このプロセスの中でおもしろいのは、集められたスケッチや事例は全てWEB上で公開されており(http://1000lab.tumblr.com/)、集落の方はもちろんのこと、私達も自由にアクセスして案の変遷をたどることが出来ることである。通常、復興に向けての提案をする、となると何度も現地を訪れて対話を重ね何ヶ月にもわたって検討を重ねた案を満を持して提案しなければならない、と構えてしまいがちでなかなか多くの人が気軽にアイディアを持ち寄ることは難しい。しかし「a book for our future」の手法では、彼らのプロセスの変遷を理解した中で「ちょっとスケッチを描いてみた」とか「こんな事例知ってるよ」などといった気楽な提案を誰でもすることが可能になる。そうして集められた数々の案は、彼らが集落の方と対話を重ねる中で淘汰され、重要なエッセンスは未来の長清水集落のデザインの中に息づくことになる。クラウドデザインとも呼ぶべきこの手法は「a book for our future」を始めるにあたり、最初に集落の方から言われたという「集落を考える仲間を集めて欲しい」という期待にも応え得る手法であり、今回の震災復興のみならず、これからの21世紀型のまちづくりを進めていく中で、非常に有効な手法であると言えるのはないだろうか。

 このように非常に可能性を秘めている「a book for our future」だが、今後課題となるのは行政との関わり方であろう。同じ南三陸町内の旧歌津町伊里前地区では「伊里前契約会」というローカルコミュニティを中心として、震災後早い段階から高台移転に関する集落独自の案をまとめていた。移転先の土地地権者や住民の了解も取れていた。しかしこの計画は、「規模が大きく国直轄のプロジェクトとする」という理由から、現在は南三陸町より待ったがかかった状態になっているという。しかし、国直轄のプロジェクトとなっては、予算がつくのは早くても来年度である。地元住民から起こったせっかくの復興への息吹が、行政の紋切り型な対応によって萎んでしまうのはなんとも口惜しい。長清水集落におけるこのプロジェクトが地元行政の体制にも風穴をあけ、被災地全体の希望の灯となることを願ってやまない。

ADcafe.311 staff/谷口景一朗(@keiichirot